geriatric1927氏の決意

2週間ほど前からイギリスの片田舎に住む79歳のおじいちゃん(ピーターさん)がYouTubeにgeriatric1927というハンドル名でビデオ投稿を始めた。Video Blog、つまりVlogを始めたってことだ。独身で話す相手がいないからちょっとやってみたらこれが大反響。Telling it all part 2で「This YouTube experience has been one of the major changes and breakthroughs in my life」と本人は言っているが、まさにその通り。今日現在でもうpart 8になっている。

ところがロイターがこのことを8月13日に報じてからが別の意味で面白いのだ。
British pensioner becomes surprise YouTube star | Tech&Sci | Internet | Reuters.com:
NEW YORK (Reuters) - YouTube, the popular online home video site, has an unexpected star -- a septuagenarian British widower -- whose soft-spoken, humble manner has won the hearts of users of the youth dominated Web site.

和訳記事はIT Mediaが8月15日付で報じている
この報道の結果、おじいさんはある決意をした。それがこのPart 7である「Telling it all 7」。



テレビ、ラジオ、新聞、フリーランスの記者などのメディアがおじいさんにコンタクトを図ろうとした結果、2000通近くのメッセージがメールボックスに溜まったらしい。おじいさんは昨日それらを全部消した。「私が話したいのは君たち、YouTubeユーザーだけだ」と。What you get is What you see、百聞は一見にしかず、理解することは見ること。インタビューは別の人間の言葉に翻訳されることが危険だし馬鹿げている。自分がメッセージを伝えたいのはあなた方YouTubeユーザーであって、世界全般に何かを言いたいわけではないと彼は話す。ちなみに彼のビデオのYouTube上でのSubscribers(購読者)は19906人だ。上のビデオは68000ビューを超えている。

このドサクサに紛れて、支援サイトやチャリティサイト・広告・geriatric1927.co.ukなんていうTシャツを売るサイトまで現れるに至り、「そういうコンテンツは自分のサイトではないし、内容をコントロールできない。つながりもない。書かれているEメールアドレスは自分のではない」とはっきり伝え、孤独のままで行くと。

YouTubeはこまめに機能拡張されているのが、この背景にあると思う。YouTubeには元々投稿ビデオへのコメントを送る機能はあったけれど、新たに「Post a Video Response」という機能ができて、単なるビデオ共有サイトではなくコミュニケーション・スペースになったことが大きい。
YouTube - Broadcast Yourself.:
Text comments and messages are great, but our users have once again created something really innovative completely on their own - video responses. It's been amazing to watch our users create an entirely new mechanism for communicating with one another. However, one of the challenges with these video dialogues has been there is no way to 'link' your response back to the original video. To encourage and simplify this type of communication we just launched a new Video Response feature that will allow you to upload your own video reply while you're watching a video.
この「Telling it all 7」へのVideo Resoponseだけでも53編ある。おじいさんにとっては、これはすごい楽しみであるはず。こうなるとこれを報じたロイターなどメディアが悲惨だ。メッセージを伝えたい対象が明らかで特に事件性もないのであれば、彼らは単に邪魔者でしかない。「ビデオ共有サイトで生まれたスター!」なんてノリで報じてとんだ赤恥をかかされた格好になっているというわけだ。

ここのところ、どうもマス・メディアの分が悪い。先週、帰省の新幹線で読んだ週刊東洋経済に、気になる本をぼろぼろになるまで徹底的に読めというSBIホールディングスの北尾氏の勧めがあったので今それをやっているのだけど、対象の本はトフラーの「富の未来」。今回の出来事はここに書かれているマス対象メディアの崩壊シナリオの伏線としてドンピシャという感じで、僕的には結構気持ち良かったりする。ま、同じような気持ちの人が多いのか、励ましのビデオ・コメントも1380件もついてる。IT Mediaの人も直訳記事ではなくて、もう少し待ってこの一件を報じれば面白かったのになー。

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