永遠の生の始まり

写真を撮りだして悩むのは保存。紙のアルバムに整理するという発想は写真が珍しかった時代を引きずっているのだろうと思う。デジカメ全盛になった今、膨大な数の写真はどう残せばよいか。写真を厳選し「残すべきを残す」という考え方はある。でもそんなのはあまり写真を撮らない人か余程マメな人でないと無理。

DVDやCDに焼いても紛失したり火事になればおしまい。自分が生きている間はいいが、その後はどうなるかわかったもんじゃない。また、ここ数年で「100年プリント」が自宅のインクジェットプリンターでできてしまうようになったが、本当に100年持つかどうかはわからない。1000年は無理だろう。

僕はPicasa Web Album(やっと日本語版も出たね)に、つまり、Googleに写真データをどんどんアップし出している。Googleという会社は100年後あるかどうかわからないが、デジタルデータは劣化させずに複製できる。Googleが無くなってもデータは別の企業が引き継いでいくだろうと思う。今のGoogleが200年前をググれるようにね。

記憶域の容量だが、Mooreの法則ならぬ、Kryderの法則というのがあって、「ストレージ容量(厳密にはbits per. unit area)は13ヶ月毎に2倍になる」「10.5年で1000倍になる」というのが一時期、WikiPediaにも記されていた。しかし、「合意が得られていない」ということで、10月に削除されたようだ。その経緯はdiscussionにある。Kryderの法則に触れる代わりに今は、Seagate社の上級副社長インタビューにある以下のくだりが引用されている記事がいくつかある。
Seagate Outlines the Future of Storage:
HWZ : When do you think we can break the Terabyte barrier?
Chirico : Well, we're shipping a 500GB drive now. The Tera barrier would probably be within two to three years time. Since we're on a projected growth of areal density of about 40% a year, so in about two to three years, we should be in the area of about a 900GB to a Terabyte.
ここの毎年40%という数字を使って、Google SpreadSheetsでちょっとシミュレーションしてみた。
今年のパーソナルレベルのディスク容量を仮に400GBとする。2009年には1テラを超え、2030年には1ペタを超える。個人でだ。この表は2030年までだが、計算では2036年か2037年くらいには、人間の一生に相当する時間のハイビジョン録画を個人で記録できる程の容量になる。2050年くらいには1人で100人分を超える人生をハイビジョンクオリティで記録できる容量を持つことができる。22世紀にはお墓の概念もすっかり変わって、ネットにその人の記録と共にお墓があるのが普通になるかもしれない。

もうちょっと身近な例として、こんな例えを出す人もいるな。
Feature: The Future of Digital Media:
If Kryder’s law holds, the iPod of the future should hold one year of video by early 2012 and essentially all commercialized music by 2015.

Kryderの法則が成立するならば、未来のiPodは2012年初頭に1年分のビデオを記録でき、2015年までには、全ての商用音楽の1年を本質的には保持できるべきだ。
ところで、1年半前に「はてな」でこんな記事を書いた。
Seven Degrees@hatena - サーチエンジンとか:
大げさかもしれないが、サーチエンジンはヒトの生死にも影響する。「人間は2度死ぬ、1度目は本人の死、2度目は当人を知るものが全て死んだとき」という話は聞いたことがあると思う。そして第3の死が「記録の消滅」だ。これは今までごく限られた人々 - 犯罪者も含め、歴史上に名を残した人 - だけのものだったが、これからはサーチエンジンのキャッシュから消える時というのが第3の死に加わるだろうね。
これは少し認識が甘かった。3度目の死である「記録の消滅」は遥か未来にDelayするかもしれないということ。実質永遠の生を得られるってことだ。怖いことでもある。Picasa Web Albumはその始まりかもしれない。うーん、壮大すぎかな?