Web 2.0のトリレンマ

情報処理学会でこういう発表があったようだ。
性善説に基づく点が弱さというところまではわかるとして、「リテラシー向上を地道な啓蒙で」だけではちょっと寂しい。この先が真の問題ではないかという気がする。「企業価値が」とか「キャッシュフローが」とかまでいかなくとも、企業のグローバリゼーション・基本要件となった内部統制(金融商品取引法、会社法)との関係に踏み込まないと1年前のTim O'Reillyの"What is Web 2.0?"のレベルからあまり進展しないし、それ抜きには広告モデルによるビジネス事例紹介というデジャブから抜け出せないと思う(kivaのようなのもあるが)。「情報処理学会」だし、聴きに来ている方の目的も違うので止むを得ないんだろうけどね。

僕は、山形氏が経済のトリセツで紹介したShellの予測本に出てくる3軸の関係(効率性、セキュリティ、社会のまとまり)とか、開放経済下のトリレンマ(open-economy trilemma)と同じようなパラドックス含みの話になるんではないかと思っている。実際には4軸とか5軸になるかもしれない。

例えば、「開放経済下のトリレンマ」は、
(1)国境を越えた自由な資本移動、(2)為替相場の安定、(3)国内均衡(完全雇用)を実現するための金融政策の独立性、という三つの金融政策の目標のうち、完全に両立しうるのは最大二つまでである。
だが、これをこう定義し直してみる。
(1)企業を越えた集合知の活用、(2)会社法・金融商品取引法を満足する内部統制の実現、(3)企業情報戦略の独立性、という三つの情報化政策の目標のうち、完全に両立しうるのは最大二つまでである。
「Web 2.0は気になる、しかし他の2つを優先しているので今は手を出せない」、企業の悩みはそんなところだと思う。今後、どうシフトするか(或いはしないのか)? 僕も含めてこれに悩んでいる人は多いのではないか?ただ、話のレイヤーが違うので同じセッションでやるには無理があるかもしれない。経済学者とか企業経営に関わる方による、この領域の話というか、理想的にはテクノロジー・事業戦略レベル・企業経営・マクロ経済の垂直4点セットになっていればかなり聴き応えがあるのでは、と思った次第。

参考: